この数値自体は「世界の食品ロスとの比較」で紹介した表の通り「ひとりあたりの食品ロス」の列で見ると
日本は他の先進国の中でもとりわけ多いわけではありませんし、
食品ロスの定義が可食部、所謂「食べられる物の廃棄」で間違いなければ
日本はもちろんのこと、他国でも計上されていない物がたくさんあります。
本より食品廃棄量の中から可食部の数値がわからない国の方が多数であることから
比較することも望ましくないかもしれません。
単純に数値を比較するのではなく、まずはそれぞれどのように算出しているのかを知っておくことは
世界における食品ロス事情を把握する上で大切なことですので、
ここでは「平成27年度 農林水産省委託事業 海外における食品廃棄物等の発生状況及び再生利用等実施状況調査」を
参照しながら世界の食品廃棄物の算出方法を取り纏めていきます。
世界の食品廃棄物量の把握方法
日本には2017年度時点で約570万tの食品ロスがあります。「食品ロスの現状と世界との比較」で紹介の通り2015年度以降順調に食品ロスの量を削減しています。
2022年現在では見聞きすることは少なくなりましたが、日本は食品ロス大国と表現されることがあり、ひとりあたり年間50kg、毎日お茶碗一杯分のご飯を捨てているのと同じこと、例えられています。
2015年度比較で2019年度は約12%食品ロスを削減しています。日本のひとりあたりの食品ロスは2019年度は年間45.1kgで、一日あたり124gの食品ロスと計算できます。順調に減少しているものの、毎日お茶碗一杯分のご飯を捨てている計算になることには変わりはありません。
国名 | 食品廃棄物の定義 | 食品廃棄物の発生量や削減量の把握方法 |
---|---|---|
アメリカ |
USDA:米国農務省 USDA と EPA の共同の取組みである「U.S. Food Waste Challenge」では、「食料の損失・廃棄(food loss and waste)」という一般的な用語を用いて、「フードチェーン全般における食品廃棄物の可食部分」を表現している。なお、リサイクル関連の活動や統計において、「食品廃棄物(Food Waste)」という言葉を用いた場合、骨などの可食部分でないものにまで拡大して解釈されていることがあり、米国で統一的な定義がないのが現状である。 EPA:EPA では、「食べられなかった食品、及び食事の準備の過程で発生した家庭、及び商業施設(食品小売業、飲食店、農産物直売所、事業者の食堂や調理場)、産業(従業員食堂など)からの廃棄物」と定義している。 USDA:USDA の Economic Research Service (ERS)は、「食料損失(food loss)」を「収穫後の食品の可食部分であって、人間消費に供用可能であったが、いかなる理由であれ消費されなかった量」、と定義している。ここには調理や不適切な温度管理によるロス(水分蒸発等)などが含まれる。U.S. Food Waste Challenge では、「食料の損失・廃棄(food loss and waste)」という一般的な用語を用いて、全フードチェーンにおける食品の可食部分の廃棄物を表現している。 |
USDA のホームページでは、「2030 年までに食品廃棄物を半減する」という目標をどのように把握するのか、という Q&A が掲載されており、その概要は次のとおりである。 |
イギリス |
WRAP:イギリスの政府機関の政府機関の財政支援により設立された非営利団体。
計画名:廃棄物削減に関する長期ビジョン: 「廃棄物 0 経済」(zero waste economy)を目指して |
各セクターが、「自主協定」に基づく取組みを測定・検証することとなっている。WRAPは、これらの情報を収集・統括し、独自の調査結果も踏まえて全体の成果を検証する。 |
フランス |
協定名:「食品廃棄物削減に関する協定」(Pacte National de Lutte Contre le GaspillageAlimentaire) |
フランスにおける食品廃棄物削減状況の評価、及び、本協定の進捗状況は、国が作成した統計計測ツールを用いて 2016 年以降に計測を行い、把握されることとなっている。これによってフランスで初めて、食品廃棄物の発生量等が統一的、サプライチェーン横断的に計測されることになるという。 |
ドイツ |
BMEL 調査(2012)では、以下の2つを食品廃棄物として定義しており、今後施策推進の上で、この定義が参照される可能性がある。定義は次の2つから成る。 |
発生量や削減量の把握方法は明示されていない。 |
オランダ |
計画名:廃棄物マネジメントの基本戦略:「廃棄物マネジメント計画」(The National Waste Management Plan) |
毎年、廃棄物マネジメントの進捗状況を報告書にまとめて公表することとなっている(オランダ語のみ)。しかし、現在公表されている本計画に関する最新の報告書は、2013 年2 月に公表された 2006 年~2010 年の報告書となっている。 |
中国 |
食品廃棄物は、概ね一般廃棄物の中の食品部分と位置付けられている。したがって、農業生産段階や製造者段階、卸・小売段階は含まれず、家庭と飲食事業者の段階を示す。ただし、狭義の食品廃棄物は家庭段階を含まず飲食事業者における食品廃棄物のことを示す場合もある。地方レベルの食品廃棄物の規則では、食品廃棄物を飲食店からの廃棄物として取り扱っているところが多い。JICA プロジェクト「政策大綱」においても、食品廃棄物(餐厨废弃物)を Restaurant Garbage(レストランからの廃棄物)としており、家庭用は含んでいないことが示されている |
発生量や削減量については、地方政府レベルでの把握を促進しようとしており、パイロットプロジェクトの実施等が進められている。 |
韓国 |
韓国における食品廃棄物は、一般廃棄物の中の食品部分である。下図の廃棄物の分類にもあるとおり、家庭系の食品廃棄物と事業系の食品廃棄物双方が含まれている。事業系の食品廃棄物については、飲食店からの廃棄物に加えて、事業所の食堂等からの廃棄が含まれる。 なお、1 日 300kg以上廃棄物を排出する食品製造業からの動植物性残渣は産業廃棄物として計上されており、食品廃棄物には含まれていない。 ※ 動物性残渣 ※ 植物性残渣 |
一般廃棄物に関しては、自治体で排出量等の把握が義務付けられており、政府レベルではこれらのデータを集計することで把握することができる。なお、産業廃棄物については、廃棄物管理法で事業所、輸送業者、処理事業者等が電子情報処理システム(韓国環境公団が運営する Allbaro システム https://www.allbaro.or.kr/)への入力が義務付けられている。 |
調査結果に記載の通り、各国それぞれ食品廃棄物の定義そのものも
サプライチェーン・可食部によって異なりますし、
その把握方法についても自治体が実施する国もあれば非営利団体が実施する国もあるということがわかります。